「定住者」のポイントまとめ【その2】【告示外定住】

「定住者」の在留資格のうち、「法務大臣が「特別な理由」を考慮し、「定住者」の在留資格を決定する場合」である、「告示外定住」について解説いたします。
※「告示定住」については以下ページをご参照ください。

認定難民

法務大臣は、在留資格未取得外国人に対し難民認定をする場合は、原則「定住者」の在留資格を付与することとされています。

離婚定住

日本人、永住者又は特別永住者である配偶者と、離婚後引き続き本邦に在留を希望する者(後述「日本人実子扶養定住」を除く)

  • 許可要件

「離婚定住」と呼ばれるこの場合の要件は次のいずれにも該当する者です。

  1. 日本において、概ね3年以上正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められる者
  2. 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  3. 日常生活に不自由しない程度の日本語の能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難となるものでないこと
  4. 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
  • 審査上のポイント

上記許可要件1の「正常な婚姻関係・家庭生活」とは、通常の夫婦としての家庭生活を営んでいたことを言います。別居していた期間があっても、夫婦としての相互扶助、交流が続けられ、別居をする合理的な理由(仕事の都合等)があれば、正常な婚姻関係と言えるでしょう。

3で求められる日本語能力については、日本語能力試験等の試験に合格していることまでは問われませんが、例えば、入管の審査官からの質問に答えられる程度の日本語能力は必要でしょう。

「離婚定住」の場合は、離婚に至った経緯や理由についても審査上非常に重要です。自身の不徳(不倫やDV等)によって離婚に至った場合は不利に働き、相手方(日本人、「永住者」、特別永住者)の不徳によるのであれば有利に働きます。

尚、相手方が日本人、「永住者」、特別永住者ではなく、「定住者」や「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格者である場合も「離婚定住」が認められる可能性がありますが、ハードルは更に高くなります。「定住者」の場合は5年以上、「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格の場合は10年以上正常な婚姻生活の継続が求められるとされています。

死別定住

日本人、永住者又は特別永住者である配偶者が死亡した後引き続き日本に在留を希望する者(後述「日本人実子扶養定住」を除く。)

  • 許可要件

「死別定住」と呼ばれるこの場合の要件は次のいずれにも該当する者です。

  1. 配偶者の死亡までの直前概ね3年以上、日本において正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められる者
  2. 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  3. 日常生活に不自由しない程度の日本語の能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難となるものでないこと
  4. 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
  • 審査上のポイント

「離婚定住」と同じです。

日本人実子扶養定住

日本人の実子を監護・養育する者

  • 許可要件

「日本人実子扶養定住」と呼ばれるこの場合の要件は次のいずれにも該当する者です。

  1. 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  2. 日本人との間に出生した子を監護・養育している者であって、次のいずれにも該当すること
    • 日本人の実子の親権者であること
    • 現に相当期間当該実子を監護・養育していることが認められること
  • 審査上のポイント

日本人との間に出生した子を離婚、死別後に、日本国内にて親権をもって監護・養育する場合は、概ね3年の婚姻生活期間がなくとも「定住者」が認められます。
また夫婦の婚姻関係は求められていないため、例えば妻がいる日本人父の愛人として外国人母が出産した子も対象となります。

「日本人の実子」とは、子の出生時点で父又は母のどちらかが日本国籍有している者を言います。また日本人と血縁関係(生物学的親子関係)が認められる者である必要があり、嫡出推定等により法律上の親子関係が認められていたとしても、生物学上の親子関係が存在しなければ「日本人の実子」とは認められません。

日本人の実子が低年齢の場合、すぐには仕事を始められず、独立して生計を営むことができない場合があります。その場合は、親族からの援助があり日本での生活を営むことが可能であること、子の養育が落ち着いたら日本で働く意思と、就職するに当たり一定以上の技能やスキル、経験があること等を説明することで許可の可能性が高まります。

婚姻破綻定住

日本人、永住者又は特別永住者との婚姻が事実上破綻し、引き続き在留を希望する者

  • 許可要件

「婚姻破綻定住」と呼ばれるこの場合の要件は次の1又は2に該当し、3又は4のいずれにも該当する者です。

  1. 日本において、3年以上正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められる者
  2. 正常な婚姻関係・家庭生活が継続後にDVによる被害を受けたと認められる者
  3. 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  4. 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
  • 審査上のポイント

「婚姻が事実上破綻し」とは、法律上の婚姻関係は継続中ではあるものの、夫婦双方に婚姻継続の意思が無くなり、同居・相互扶助の活動が事実上行われなくなり、婚姻関係を修復しうる可能性が無くなった状態等を言います。DV被害を受けていれば、3年以上の正常な婚姻生活がなくとも認められる可能性があります。

特別養子縁組定住

特別養子の離縁により「日本人の配偶者等」の在留資格該当性がなくなった者(申請人が未成年等のため実親による扶養又は監護が必要となる場合で、扶養又は監護する実親が海外に在住するときを除く。)で、生計を営むに足りる資産又は技能を有するもの

  • 許可要件

「特別養子縁組定住」と呼ばれるこの場合の要件は次の1及び2に該当する者です。

  1. 日本において、養親に扶養されていたと認められる者
  2. 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  • 審査上のポイント

未成年等のため実親による扶養又は監護が必要となる場合で、扶養又は監護する実親が海外に在住するものは、「特別養子縁組定住」に当たりません。

未成年等のため実親又は新たな養親による扶養又は監護が必要となる場合で、日本において、実親又は新たな養親に扶養される場合は、当該実親又は新たな養親に扶養能力が認められることが必要になります。

難民不認定処分後特定活動定住

難民の認定をしない処分「難民不認定処分」後、特別な事情を考慮して在留資格「特定活動」により、1年の在留期間の決定を受けた者で、在留資格「定住者」への在留資格変更許可申請を行ったもの

  • 許可要件

「難民不認定処分後特定活動定住」と呼ばれるこの場合の要件は次のいずれにも該当する者です。

  1. 入国後10年を経過していること
  2. 在留特別許可又は在留資格変更許可により在留資格「特定活動」の決定を受けた後、3年を経過していること
  • 審査上のポイント

難民申請後、不認定となり「特定活動」の在留資格を付与され、1年の在留期間の決定を受けた者が当てはまります。
上記要件を満たせば、同居する家族全員(配偶者、子等)についても「定住者」在留資格が付与され得ます。

両親が既に帰国し又は行方不明の未成年子や児童虐待被害を受けた未成年子

両親が帰国や行方不明等で日本に在留していない未成年子や、両親は日本に在留しているものの、児童虐待等の被害を受けた未成年子について、「定住者」を認めています。

かつて「告示定住」としての「定住者」の在留資格を有していた者

「定住者」から他の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「留学」等)に変更後、再度「定住者」の取得も可能であるとされています。

就労系の在留資格により継続して10年程度滞在している者

就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」等)により10年程度在留している者への「定住者」への変更は、従来は認められていた事例がありましたが、近年は認められなくなったとされています。

現在においても、確かに原則は許可されないという理解になりますが、失職等により就労できなくなったものの、少なくとも当分の間独立して生計を維持する資産や能力があり、在留を認めるべき必要性が高いとして、「定住者」への変更を認めた事例があります。

出国中に再入国許可期限が徒過した「永住者」

「永住者」の在留資格を有する者が出国し、再入国許可の期限内に日本に入国できなかった時は、「永住者」の在留資格は喪失しますが、「定住者」の在留資格を受けて入国できる可能性があります。

上陸拒否事由に該当することが発覚した「永住者」

「永住者」の在留資格を有する者で、日本上陸の際にこれまで発覚していなかった新たな上陸拒否事由が見つかった場合、既に日本で配偶者や子等がいる場合等、日本に生活の本拠があり、家族の結合が認められる場合は「定住者」での上陸許可が受けられる可能性があります。

※上陸拒否事由については、出入国在留管理局HP(入国・帰国手続<上陸拒否事由(入管法第5条)> | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp))を参照してください。

父母に同伴して「家族滞在」又は「公用」をもって入国した上で、我が国の義務教育を修了し、高等学校を卒業後に進学せず、本邦で資格外活動許可の範囲を超えて就労することを希望する者

父又は母が日本で働く時、配偶者と子は「家族滞在」という在留資格を得られますが、子に関しては年齢が上がるにつれ「家族滞在」の許可のハードルは高くなります。一般的には義務教育期間終了後、大学等に進学をしない場合は、「家族滞在」が認められる年齢は、高くても24~5歳まででしょう。

そこで、高校卒業後進学をしない場合は、一旦「特定活動」という在留資格へ変更し、一定期間在留、就業した上で、独立して生計を立てていく能力があることが認められた場合、「定住者」への変更が可能となります。

日系3世である親の「扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子」のうち、当該親は帰国するものの、本邦において在学中であり、引き続き在学したいとして在留を希望する者

日系3世の実子、日系4世について「定住者」を認める余地があります。
未成年で未婚、かつ一定の年数当該親と在留し、日本の教育を受けていることが求められます。

日系4世に関しては、「定住者」の他、「特定活動」での在留が認められる場合があります。

まとめ

「告示外定住」で「定住者」が認められるケースをご紹介いたしましたが、この他にも認められるケースは存在します。

ポイントは、以下の4点です。

  1. 在留を認めるべき必要性
  2. 日本への定着性
  3. 独立して生計を営む資産又は能力
  4. 素行善良

これらを満たせば「特別な理由」があるとして「定住者」が認められる場合がありますので、ご検討の際は専門家に相談しましょう。

 

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