「定住者」のポイントまとめ【その1】【告示定住】

「定住者」は、日系2世、3世や日本人と離婚した後に日本に在留する外国人等が取得できる在留資格ですが、その他にも当てはまる外国人は細かく定められています。
どのような外国人が当てはまり、どのような要件があるのかについて解説していきます。

定住者について(概要)

「定住者」は、日本に在留中に行うことができる活動の範囲に制限はありません。その者の地位に基づく在留資格であるため、基本的には在留期間の更新によって半永続的に日本に在留し続けることが可能です。
同じく日本に永住できる「永住者」の在留資格と比べられることも多いですが、「永住者」は無期限に日本に在留できるのに対して、「定住者」は一定の在留期間が付与され、期間満了ごとに在留期間の更新手続きが必要です。

「定住者」が認められるパターンは、大きく分けて以下の2つがあります。

  1. 法務大臣が「定住者告示」をもって予め定める地位を有する者としての活動を行おうとする外国人の場合(以下、「告示定住」と言う。)
  2. 法務大臣が「特別な理由」を考慮し、「定住者」の在留資格を決定する場合(以下、「告示外定住」と言う。)

1の場合は、入管法上定められた活動に当てはまる外国人に「定住者」の在留資格を認めることとなるので、条文を読めばわかります。

2の場合は、「特別な理由」があると法務大臣が認めたときに「定住者」の在留資格が認められることとなるので、明確な基準がなく、判断に困る場合があります。ただし、明確な基準はないにせよ認められやすいケースと言うのは存在します。

このページでは、法律上規定されている「告示定住」について順番に解説していきます。
※「告示外定住」については以下ページをご参照ください。

告示1号から4号(日系人)

定住者告示
一 インド、インドネシア、カンボジア、シンガポール、スリランカ、タイ、大韓民国、中華人民共和国、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、東ティモール、フィリピン、ブータン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モルディブ、モンゴル又はラオス国内に一時滞在している者であって、国際連合難民高等弁務官事務所が国際的な保護の必要なものと認め、我が国に対してその保護を推薦するもののうち、次のいずれかに該当するものに係るもの
イ 日本社会への適応能力がある者であって、生活を営むに足りる職に就くことが見込まれるもの、その配偶者又はこれらの者の子、父母若しくは未婚の兄弟姉妹
ロ この号(イに係るものに限る。)に掲げる地位を有する者として上陸の許可を受けて上陸しその後引き続き本邦に在留する者が当該許可を受けて上陸する直前まで一時滞在していた国に滞在する当該者の親族であって、親族間での相互扶助が可能であるもの
二 削除
三 日本人の子として出生した者の実子であって、素行が善良であるものに係るもの
四 日本人の子として出生した者でかつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるものの実子の実子(第1号、第3号及び第8号に該当する者を除く)であって、素行が善良であるものに係るもの

1号は難民の受け入れ対象者を定めたものです。

3号及び4号は、日系人としての地位を有するものについて定めたものです。日系人については、法律上、一定の要件を満たせば日系4世まで認められます。

3号は「日本人の子として出生した者」の「実子」なので、日系2世、4号は「日本人の子として出生した者」の「実子」の「実子」なので、日系3世が当てはまります。

「かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるもの」とは、日本人の子として出生し、かつ、日本国籍を有していたことがある者で、その後日本国籍を失った者です。

具体的には、以下のような例が当てはまります。

  1. 日本人の孫(3世)
  2. 元日本人(日本人の子として出生したものに限ります。以下同じ。)の日本国籍離脱後の実子(2世)
  3. 元日本人の日本国籍離脱前の実子の実子である孫(3世)
  4. 日系1世が日本国籍を離脱後に生まれた実子(日本国籍を持たない)の実子である孫(3世)

告示5号(定住者の配偶者)

五 次のいずれかに該当する者(第1号から前号まで又は第8号に該当するものを除く。)
イ 「日本人の配偶者等」の在留資格を持って在留する者で、日本人の子として出生した者の配偶者
ロ 1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者 (第3号又は前号に揚げる地位を有するものとして上陸の許可、在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者及びこの号に該当する者として上陸の許可を受けた者で、当該在留期間中に離婚をした者を除く。) の配偶者
ハ 第3号又は前号に揚げる地位を有する者として上陸の許可、在留資格の変更の許可、又は在留資格の取得の許可を受けた者で 、1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留するもの(この号に該当する者として上陸の許可を受けた者で、当該在留期間中に離婚をしたものを除く。)の配偶者であって、素行が善良であるもの

イは、日本人の子として出生し、「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留している者について認めています。

ロ、ハは「定住者」の配偶者について認めています。

ロは日系2世、3世以外の定住者、ハは日系2世、3世の定住者の配偶者について定めており、日系2世、3世の定住者については、「素行が善良である者」のみについて認めています。

ロ及びハのかっこ書きは、「当該在留期間中に離婚をした者を除く。」とされています。「当該在留期間」とは定住者が現に有している在留期間を指しています。
すなわち、定住者と結婚した配偶者が、定住者の在留資格を取得したとしても、付与された在留期間内に離婚をした場合は「定住者」の在留資格たる地位を失うということとなります。

これは、定住者の配偶者として日本に入国した後すぐに離婚をして、外国にいる外国人と結婚し、その者を定住者の配偶者として日本に呼び寄せることを防止するためです。

告示6号(定住者等の実子)

六 次のいずれかに該当するもの(第1号から第4号まで又は第8号に該当する者を除く 。)に係るもの
イ 日本人、永住者の在留資格をもって在留する者、又は日本国との平和条約に基づき、日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年法律第71号)に定める特別永住者の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子
ロ 1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者(第3号、第4号又は前号ハに揚げる地位を有する者として上陸の許可、在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者を除く。)の扶養を受けて生活する当該者の未成年で未婚の実子
ハ 第3号、第4号又は前号ハに揚げる地位を有する者として上陸の許可、在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者で、 1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子であって素行が善良であるもの
ニ 日本人、 永住者の在留資格を持って在留する者、特別永住者又は1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留期間を持って在留する者の配偶者で、日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等の在留資格を持って在留するものの扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子

日本人、特別永住者、「永住者」、「定住者」又はこれらの者の配偶者(「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」)で在留する外国人の扶養を受けて生活する未成年・未婚の実子について定めています。

イは、日本人、特別永住者又は「永住者」の扶養を受けて生活をする未成年・未婚の実子です。

日本人の子として出生した者は、通常「日本人の配偶者等」の在留資格を有することとなります。また、当該実子の親が日本人の子として出生した者である場合は、前述した「告示3号」に該当することとなります。
したがって、日本人の子として出生した者がこの告示6号イに当てはまる場合は、帰化により日本国籍を取得した者の帰化前の子となります。

特別永住者又は「永住者」の子として出生した者は、日本で出生しそのまま日本に在留する場合は、「永住者」、「永住者の配偶者等」、特別永住者が該当します。
したがって、特別永住者又は「永住者」の子として出生した者がこの告示6号イに当てはまる場合は、日本外で出生した者又は日本で出生後そのまま日本に在留せず、海外で生活していた者です。

ロとハは、定住者の扶養を受けて生活する未成年・未婚の実子です。定住者が2世、3世の場合は、素行善良要件があります。

二は、日本人、特別永住者、「永住者」又は「定住者」の配偶者(在留資格が「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」 に限る。)の扶養を受けて生活するその未成年で、未婚の実子です。

つまり、日本人、特別永住者、「永住者」又は「定住者」と結婚し、「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留している者の連れ子が当てはまります。

告示6号については文章が長く、わかりにくい部分もあるかと思いますので、簡潔にまとめた以下表についてもご参照ください。

告示7号(6歳未満の養子)

七 次のいずれかに該当する者の扶養を受けて、生活するこれらの者の6歳未満の養子(第1号から第4号まで、前号又は次号に該当する者を除く。)に係るもの
イ 日本人
ロ 永住者の在留資格を持って在留する者
ハ  1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格を持って在留する者
ニ 特別永住者

日本人、「永住者」、「定住者」、特別永住者の扶養を受けて生活する、6歳未満の養子について認めています。

日本入国後、6歳に達した場合において、実務上は即時に日本退去となるわけではなく、「定住者」の在留期間更新が認められる可能性が高いです。

告示8号(中国在留邦人関係)

八 次のいずれかに該当する者に係るもの
イ 中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの ロ 前記イを両親として昭和20年9月3日以後中国の地域で出生し、引き続き中国の地域に居住している者
ハ 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律施行規則(平成6年厚生省令第63号)第1条第1号若しくは第2号又は第2条第1号若しくは第2号に該当する者
ニ 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)第2条第1項に規定する中国残留邦人等であって同条第4項に規定する永住帰国により本邦に在留する者(以下「永住帰国中国残留邦人等」という。)と本邦で生活を共にするために本邦に入国する当該永住帰国中国残留邦人等の親族であって次のいずれかに該当するもの
(i) 配偶者
(ii) 18歳未満の実子(配偶者のないものに限る。)
(iii)日常生活又は社会生活に相当程度の障害がある実子(配偶者のないものに限る。)であって当該永住帰国中国残留邦人等又はその配偶者の扶養を受けているもの
(iv)実子であって当該永住帰国中国残留邦人等(五55歳以上であるもの又は日常生活若しくは社会生活に相当程度の障害があるものに限る。)の永住帰国後の早期の自立の促進及び生活の安定のために必要な扶養を行うため本邦で生活を共にすることが最も適当である者として当該永住帰国中国残留邦人等から申出のあったもの
(v)前記(iv)に規定する者の配偶者
ホ 6歳に達する前から引き続き前記イからハまでのいずれかに該当する者と同居し(通学その他の理由により一時的にこれらの者と別居する場合を含む。以下同じ。)、かつ、これらの者の扶養を受けている、又は6歳に達する前から婚姻若しくは就職するまでの間引き続きこれらの者と同居し、かつ、これらの者の扶養を受けていたこれらの者の養子又は配偶者の婚姻前の子

第二次世界大戦直後の混乱による、中国在留日本人関係の方々について規定されています。

素行善良要件について(告示3号、4号、5号ハ、6号ハ)

告示3号、4号、5号ハ、6号ハについては、「素行が善良であるもの」と規定されています。この素行善良要件については、以下の事由に該当しないことが求められます。

1 日本、又は日本以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮、罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金等は除く)に処せられたことがある者。 但し、以下のいずれかに該当する場合は該当しないものとして扱う。
① 懲役、禁錮等については、その全ての刑の執行が終わり、若しくは、執行の免除を得た日から10年経過し、又は、刑の執行猶予の言渡し若しくはこれに相当する措置を受けた場合で、当該執行猶予の期間若しくはこれに相当する期間を経過したとき。
② 罰金刑又はこれに相当する刑については、その執行を終わった日、又はその執行の免除を得た日から5年経過したとき。
2 少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号、第3号)が継続中の者
3 日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等、特段の事情がある者
4 他人に入管法に定める証明書の交付、又は許可を受けさせる目的で不正な行為を行った者、又は不法就労の斡旋をした者

実務上は、申請人の国籍国や以前居住していた国の「犯罪経歴証明書」や「無犯罪証明書」等を提出して、犯罪歴がないことを証明します。日本の犯罪歴の確認については、地方検察庁、少年院、保護観察所等に照会されます。

また過去に罰金刑を受け、その執行から5年経ったとして素行善良要件を満たしているとされる者でも、犯した罪に対する反省文や説明文を作成し、十分反省していることを表明した方が良いでしょう。

上記1~4に当てはまる場合でも、引き続き在留を認めるに足りる特段の理由がある者については許可されることがあり、実務上、配偶者や子がいる場合等には考慮されることがあります。

まとめ

「定住者」のうち、「日系人」、「定住者の配偶者」、「定住者等の実子」等、「告示定住」の場合について解説いたしました。
その他のケースについては以下ページをご参照ください。

「定住者」のポイントまとめ【その1】【告示定住】” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です