まるっと解説!就労ビザの必要書類について
企業が外国人を雇用する際、多くの場合は「技術・人文知識・国際業務」の申請をする必要があります。申請に必要な書類は、入管庁のHPに記載されています。この必要書類について、1つずつ解説していきます。
目次
「技術・人文知識・国際業務」の必要書類
入管庁のHPに記載されている「技術・人文知識・国際業務」の必要書類は、以下の通りです。
- 申請書
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 雇用契約書又は労働条件通知書写し
- 履歴書
- 卒業証明書
- 履歴事項全部証明書
- 決算文書
これらの必要書類について、具体的に見ていきましょう。
申請書について
今回は、新卒で採用した留学生が準備する、「在留資格変更許可申請書」を例に解説いたします。
是非お手元に申請書をご用意いただきながら読んでいただけると、理解度がさらに深まると思います。
申請人用(1~2ページ)
- 国籍・地域
- 二重国籍の場合は、この後に記載するパスポート情報と同じ国籍を記載しましょう。
- 生年月日
- パスポートと同じ、正確な情報を記載しましょう。
- 氏名
- パスポートと同じ、ミドルネームまで正確な情報を記載しましょう。
- 性別
- パスポートと同じ、正確な情報を記載しましょう。
- 出生地
- パスポートと同じ、正確な情報を記載しましょう。都市名までで問題ありません。
- 配偶者の有無
- 申請日現在の情報を選択しましょう。
- 職業
- 申請日現在の情報を記載しましょう。留学生の場合は「学生」です。
- 本国における居住地
- 母国にある住所を記載しましょう。都市名までで問題ありません。母国に住所がない場合は、出生地を記載しましょう。
- 住居地、電話番号、携帯電話番号
- 今日本で住んでいる住所を、在留カードに記載のある住所表記で記載しましょう。
- 固定電話がなければ、空欄で問題ありません。
- 固定電話、携帯電話どちらかは記載する必要があります。
- 旅券
- 番号
- 多くの場合は、パスポートの顔写真ページの右上に記載があります。
- 有効期限
- 期限切れの場合でも申請はできますが、申請前に更新手続を行い、その旨を説明した文書を用意しましょう。
- 番号
- 現に有する在留資格、在留期間、在留期間の満了日
- 現在お持ちの在留カードに記載されている在留資格、在留期間、在留期間の満了日を記載しましょう。
- 在留カード番号
- 現在お持ちの在留カードの右上に記載されている在留カード番号を記載しましょう。
- 希望する在留資格、在留期間
- 希望する在留資格名と在留期間を記載しましょう。在留期間は在留資格によって付与される年数が異なりますので、在留資格ごとに調べましょう。
- 今回のケースは「技術・人文知識・国際業務」ですので、付与される在留期間は1,3,5年から審査官の審査によって決定されます。雇用期間に期限の定めがない場合は、最大の「5年」と記載しましょう。
- 変更の理由
- 簡単に1行程度で記載しましょう。
- 【例】○○株式会社に入社予定の為
- 犯罪を理由とする処分を受けたことの有無
- 日本国内外問わず、軽微な交通違反等でも法律を犯した経験があれば記載しましょう。もっとも、犯罪歴がある方についてはそのことについて詳細に説明した文書と反省文も併せて提出するべきであり、申請書には、「別途犯罪についての説明文参照」とだけ記載すればよいでしょう。
- 在日親族(父・母・子・兄弟姉妹・祖父母・叔父・叔母等)及び同居人の有無
- 日本に親族がいれば記載しましょう。血縁関係がなくても、同居人(友人等)がいれば記載しましょう。
- 勤務先
- 名称、支店・事業所名
- 雇用予定の会社名と、勤務予定場所の支店名を記載しましょう。
- 【例】○○株式会社 東京支店
- 所在地
- 雇用する会社の本店ではなく、勤務予定場所の所在地を記載しましょう。
- 電話番号
- 勤務予定場所や所属部署の電話番号を記載しましょう。
- 名称、支店・事業所名
- 最終学歴
- 学歴の中で最も高い教育機関の学校の情報を記載しましょう。大学を卒業した後に日本語学校を卒業した場合は、大学の情報を記載することとなります。
- 専攻・専門分野
- 最終学歴で学んだ専門分野について記載しましょう。
- 情報処理技術者資格又は試験合格の有無(情報処理業務従事者のみ記入)
- 情報処理業務に従事する方のみ、以下入管庁のHPで定めている資格をお持ちであれば記載しましょう。
https://www.moj.go.jp/isa/laws/nyukan_hourei_h09.html - これらの資格を有する方は、学歴要件を満たさない場合でも「技術・人文知識・国際業務」が取得できる可能性があります。
- 情報処理業務に従事する方のみ、以下入管庁のHPで定めている資格をお持ちであれば記載しましょう。
- 職歴
- アルバイトを除き、フルタイムで働いた経験のみを記載しましょう。業務内容は不要で、勤務先の会社名と入退社年月までで問題ありません。
- 代理人
- 法定代理人(申請人の親、後見人等)が申請する場合、こちらに記載しましょう。
所属機関用(3~4ページ)
- 契約又は招へいしている外国人の氏名
- 雇用予定の外国人氏名を記載します。通常、1ページ目に記載した氏名と同じになります。
- 契約の形態
- 雇用に比べると委任や請負の場合は、取得難易度が上がります。雇用以外の場合は、契約書と仕事内容、契約期間、報酬等を詳細に説明した文書も併せて提出するべきです。
雇用以外の契約形態の場合の申請については、以下のページで詳しく解説しています。
- 雇用に比べると委任や請負の場合は、取得難易度が上がります。雇用以外の場合は、契約書と仕事内容、契約期間、報酬等を詳細に説明した文書も併せて提出するべきです。
- 所属機関等勤務先
- 名称
- 雇用先会社名を記載しましょう。
- 法人番号
- 以下国税庁のHPより、検索が可能です。
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
- 以下国税庁のHPより、検索が可能です。
- 支店・事業所名
- 勤務予定場所の支店名を記載しましょう。
- 雇用保険適用事業所番号
- 従業員を雇っていない会社は記載不要です。
- 業種
- 次シートの「業種一覧」から最も近い業種番号を記載しましょう。
- 所在地
- 勤務予定場所の所在地を記載しましょう。
- 資本金
- 履歴事項全部証明書(謄本)に記載されている、現在の資本金を記載しましょう。
- 年間売上高(直近年度)
- 直近年度の決算文書に記載のある売上高を記載しましょう。
- 従業員数、外国人職員数(このうち、技能実習生)
- 勤務予定場所の従業員(アルバイト―パート含む)数を記載しましょう。
- 名称
- 就労予定期間
- 契約書通りに記載しましょう。
- 雇用開始(入社)年月日
- 入社予定日を記載しましょう。あくまで予定なので、この日に必ず入社させるというわけではありません。実際には、許可交付後に就労が可能となります。
- 給与・報酬
- 通勤手当や家賃補助等、実費弁償の性格を有するものは含みません。地域手当や役職手当は含みます。
- 実務経験年数
- 従事する予定の業務と関連する業務の実務経験があれば、記載します。
- 職務上の地位(役職名)
- 役職がある場合は、記載します。
- 職種
- 別シートの「職種一覧」から最も近い番号を記載します。
- 活動内容詳細
- 入社後の業務内容について記述します。別紙を用意する場合は、「別紙雇用理由書参照」と記載しましょう。
※次シートは、派遣会社の場合で、派遣先がある場合に記入
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表について
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表とは、給与支払い事業者が従業員に支払った給与や賞与などの支払いに対して、源泉徴収税をいくら差し引いたかをまとめた書類です。この書類は、年度末に給与支払い事業者が作成し、翌年1月末までに税務署に提出する必要があります。
入管に提出する際は、コピーでよいですが、税務署の受領印があるものが必要です。e-taxによって電子申請した際は、税務署からの受領通知メールのコピーを用意しましょう。
雇用契約書又は労働条件通知書写し
雇用主と申請人との間で交わした契約書のコピーが必要です。在留資格の申請時点においては、雇用契約書をまだ締結していないという場合もあるかと思います。その際は、労働条件通知書でも問題ありません。
入社後の就業場所、業務内容、雇用期間、給与等の労働条件が記載されている書類が必要です。
※雇用開始日について
雇用契約書には通常雇用開始日が記載されますが、まだ就労資格を有していない外国人は、在留資格を取得した後に雇用開始日を設定する必要があります。入管での審査期間は正確にはわからないため、雇用開始日をいつに設定すればよいか迷ってしまう場合があります。
その際は、雇用開始日の横に「(予定)」と記載したり、備考として、「雇用開始日は在留資格取得後とする」と記載する等、工夫して作成しましょう。
履歴書
最低限、今までの職歴と学歴が記載されているものであれば、問題ありません。
卒業証明書
学位(学士、修士、博士等)を取得したことがわかるものが必要です。
卒業前に申請する場合は、卒業見込み証明書を提出し、新しい在留カードを受け取る際に卒業証明書の原本を持参します。
履歴事項全部証明書
会社の登記事項が記載されている書類です。法務局で取得しましょう。
決算文書
直近年度のものが必要です。決算月からまだ1ヶ月しか経っていない場合等、直近年度の決算文書がまだ出来上がっていない場合は、最新のもので問題ありません。
その他場合によっては提出した方が良い書類
- 雇用理由書
- 従事する予定の業務内容について詳しい説明が必要な場合は、雇用理由書を作成した方が良いです。
例えば、就業予定場所が工場や工事現場の場合、それだけで機械を動かしたり、単純作業を行うのではないかと疑われてしまいます。
それを見越して、マネジメント業務や専門的な知識やスキルを要する業務を行うことを説明した雇用理由書を作成した方が良いでしょう。
雇用理由書の書き方については以下のページでも解説しています。
- 従事する予定の業務内容について詳しい説明が必要な場合は、雇用理由書を作成した方が良いです。
- 在職証明書
- 「技術・人文知識・国際業務」には学歴要件がありますが、実務経験を有する人は、学歴関係なく要件を満たす可能性があります。
その際の実務経験の疎明書類として、過去に在籍していた会社から在職証明書を取得する必要があります。
実務経験の証明には、在籍していた期間と業務内容が重要なので、在職証明書には在職期間と業務内容を必ず記載しましょう。
- 「技術・人文知識・国際業務」には学歴要件がありますが、実務経験を有する人は、学歴関係なく要件を満たす可能性があります。
まとめ
一般的な必要書類を解説しましたが、会社と申請人の状況や従事する業務内容によっては追加で提出するべき書類があります。個別具体的に判断する必要がありますので、初めて外国人を採用する会社は専門家に相談することをお勧めいたします。
【Profile】
2014年に明治学院大学法学部を卒業。その後大手行政書士法人にて7年間業務に携わり、2022年10月にリノバース行政書士事務所を開業。外国人のビザ、在留資格申請をはじめ建設業、宅建業等の各種許認可申請、会社設立、合併、分割等の会社法関連業務を得意とする。