「雇用理由書」とは?【就労ビザの必要書類】
「技術・人文知識・国際業務」の申請に必要な書類は、入管庁のHPに記載されています。しかし、HP上の必要書類を集めたからと言って、必ず許可されるとは限りません。
今回は、多くの申請の際に提出した方が許可率が向上するであろう、「雇用理由書」について解説いたします。
「技術・人文知識・国際業務」の必要書類
入管庁のHPに記載されている「技術・人文知識・国際業務」の必要書類は、以下の通りです。
※カテゴリー3の場合
- 申請書(顔写真貼付)
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 雇用契約書又は労働条件通知書写し
- 履歴書
- 卒業証明書
- 履歴事項全部証明書
- 決算文書
申請人や会社の状況によって、追加で提出した方が良い書類があります。追加書類は個別具体的に判断すべきなので、困った際は専門家に相談しましょう。
「雇用理由書」とは?
一般的な必要書類と、申請人、会社の状況によって提出すべき書類がありますが、多くの申請の場合に提出した方が良い書類が「雇用理由書」です。
雇用理由書は、提出して損になることはほとんどなく、審査官にも良い印象を与えるので、積極的に提出しましょう。
とは言っても、内容があまりにも稚拙であったり、的を射ていなかったりすると逆効果となってしまいます。
ではどのように記載したらよいのでしょうか。
詳しく解説いたします。
雇用理由書の書き方
目的を明確にする
雇用理由書を書く目的を明確にしましょう。目的がぶれている、あるいは間違った目的になっていると、審査官の印象にも残りづらく、審査に良い影響を与えません。
「会社や申請人のPR」が目的となっている雇用理由書が多く見受けられます。
決して間違った方向性ではありませんが、的確ではありません。雇用理由書を書く目的は、「在留資格の許可を得ること」です。いかに会社や申請人が素晴らしい事業や経歴があったとしても、在留資格の要件に関係なければ意味がありません。
「在留資格の許可を得ること」を忘れずに作成しましょう。
客観的、論理的に書く
在留資格には、要件があります。その要件に合致しているかどうかを淡々と記載することが重要です。また主観的ではなく客観的に見て要件に合致しているということを意識して書きましょう。感情に訴えかける書き方はNGです。
【NG例】
- 申請人にとって念願の日本での就職であり、どうしても在留資格を取らせてあげたい
- 日本語学校に通っていたので、日本語がとても上手
- ITの会社にいたので、専門的な知識や技術が豊富
- 外国人観光客が良く来るホテルなので、申請人の中国語能力を生かし、翻訳通訳をしていただきたい
【修正後の例】
- 経営学の学士を取得し、当社のマーケティング部に所属予定です。申請人の学歴、業務内容ともに「技術・人文知識・国際業務」の要件に合致しています。
- 日本語能力試験N1を取得しており、日本語での意思疎通が問題ないことについて、面接で確認しています。
- 過去にIT会社に所属しており、各種アプリの開発やシステム設計に携わっていたので、専門知識と技術が備わっています。
- 外国人観光客は年間200人宿泊しており、国籍別では中国語圏のお客様が120人と一番多く、中国語での翻訳通訳担当者が必要不可欠です。
学歴、職歴要件に合致しているのか、業務内容は問題がないのか、申請人が会社にとってなぜ必要なのかを、より客観的、論理的に書くことが重要です。
将来のキャリアプランについて書く
入社後の仕事内容だけでなく、将来のキャリアプランについて記載するとよいでしょう。
例えば、「入社後は営業企画部にて、各種サービスの立案や企画等に従事していただき、3年後は役職を付け、お客様との交渉、打ち合わせ業務に従事していただきます。ゆくゆくは幹部候補生として、部署内の人員及びスケジュール等管理業務にも携わっていただきます。」等と記載すれば、将来の業務もイメージしやすく、より審査官の良い心象につながるでしょう。
まとめ
雇用理由書は、必ずしも提出が必要な書類というわけではありませんが、許可率の向上、付与される在留期間の長さにも影響してくるので、提出した方が良いでしょう。
内容は個別具体的に判断すべきことも多いので、お困りの際は専門家に相談しましょう。
【Profile】
2014年に明治学院大学法学部を卒業。その後大手行政書士法人にて7年間業務に携わり、2022年10月にリノバース行政書士事務所を開業。外国人のビザ、在留資格申請をはじめ建設業、宅建業等の各種許認可申請、会社設立、合併、分割等の会社法関連業務を得意とする。