観光、出張等の短期間のビザとは?【短期滞在で認められる活動について】

日本人が海外旅行や短期間出張で海外に行く際は、事前にビザを取得しないことがほとんどかと思います。しかし、日本は原則、日本に入国、上陸する全ての外国人に対し、ビザの取得を求めています。
短期間の観光や出張で来る外国人は、どのようなビザを取得しなければならないのでしょうか。

短期滞在とは?

在留資格「短期滞在」とは、観光、出張等短期間滞在する外国人のための在留資格です。

在留期間は、90日、30日又は15日以内から日本での目的に応じて付与されます。

日本で行うことができる活動は、「観光、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」と規定されています。

注意すべきは「報酬を得る活動」であり、短期滞在においては、報酬を得る活動は原則できません。

査証(ビザ)免除国について

90日以内の観光や出張で来日する外国人は、原則母国の日本大使館等で「短期滞在」のビザを取得する必要があります。
しかし、この事前の「短期滞在」の取得を免除している国があります。それが「査証(ビザ)免除国」です。

査証(ビザ)免除国として扱われている国は、事前のビザ取得を要せず、入国と同時に空港にて、最大の90日間の短期滞在の在留資格が付与されます。

査証(ビザ)免除国は、68の国と地域に対して行われています。
※2022年12月現在
※詳しくは、外務省HP(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html)をご確認ください。

在留期間について

査証(ビザ)免除国以外の国籍の外国人は、来日前に日本大使館等でビザの申請をする必要がありますが、ビザ申請時には、日本で行う活動の詳細、スケジュール、受け入れ先等を説明する必要があります。日本での活動内容によって、90日、30日又は15日の中から適切な在留期間が付与されます。

また短期滞在は、日本で行う活動が短期間で終了することが想定されており、出国後短期間のうちに再び入国を繰り返すことにより、事実上長期間にわたって滞在することとなる場合は対象とはなりません。短期間とは、1年間の内180日以内とされています。1年間で合計180日を超える活動は「短期滞在」では認められない可能性が高いです。

活動内容について

滞在期間が短期間であり、就労活動に該当しない活動であれば問題ありません。
認められる主な活動内容は以下の通りです。

  1. 観光、娯楽、参詣、通過の目的
  2. 保養、病気療養の目的
    ※入院して治療を受ける外国人患者又はその同行者については、滞在期間が90日以内の場合は「短期滞在」が、90日を超える場合は「特定活動」(6か月)が付与されます。
  3. 競技会、コンテスト等へのアマチュアとしての参加
    ※報酬を得てはいけませんが、主催者が交通費、滞在費等の実費を負担することは問題ありません。
  4. 友人、知人、親族等の訪問、親善訪問、冠婚葬祭等への出席
  5. 見学、視察等の目的
  6. 教育機関や企業等の行う講習、説明会等への参加
  7. 報酬を受けないで行う講演、講義等
    ※業として行うもの(事業として行っていない反復継続性のない活動)ではない講演に対する謝金は問題ありません。
  8. 会議、その他の会合への参加
    ※日本法人の役員に就任し、かつ日本法人から報酬が支払われる場合には、その者が事業の経営等に関する会議、業務連絡等で短期間来日する時であっても、「経営・管理」の在留資格に該当し、「短期滞在」には該当しません。
  9. 外国に職業活動の基盤を有することを前提に、日本に出張して行う業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査その他の活動
    ※外国企業の業務遂行のための活動を行う目的で日本に滞在する場合は、当該業務が当該外国企業の外国における業務の一環として行われるものであることが必要です。
  10. 日本を訪れる国公賓、スポーツ選手に同行して行う取材活動等、本国での取材活動に付随した一時的用務としての報道、取材活動
    ※アメリカ人については、査証免除協定により対象外となっています。
  11. 日本の大学等の受験、外国法事務弁護士となるための承認を受ける等の手続
  12. 報酬を受けずに外国の大学生が学業の一環として日本の企業で行う90日以内のインターンシップ

「短期滞在」と「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格の区別について(短期滞在の限界)

「短期滞在」で在留する外国人は、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」はできません。しかし一方で、会議への出席や視察、海外での主たる業務に付随するアフターサービス等、就労活動と捉えることもできるような活動は認められています。

よって、外国人が日本で行おうとする活動が、「短期滞在」でも適法に行えるものなのか、それとも「技術・人文知識・国際業務」等の就労系資格の取得が必要なものなのかを確実に判断することは、実務上極めて重要です。もし、「短期滞在」では認められないような活動であった場合、外国人は不法就労罪、受け入れた企業は不法就労助長罪となってしまいます。

日本で行う活動が「短期滞在」で問題ないのか、就労系の在留資格を取得すべきなのかについて、以下の判断基準から考えましょう。

「報酬を受ける活動」の解釈

金額の多い少ないにかかわらず、報酬を受ける活動は原則禁止です。ここでいう「報酬」とは、日本において行われる活動の対価として与えられる反対給付を言います。

役務提供が日本で行われ、その対価として給付を受ける場合には、対価を支給する機関が日本にあるか否か、また日本国内で支給するか否かにかかわらず、「報酬を受ける活動」となり、「短期滞在」には当たりません。ただし、日本国外で行われる主たる業務に関連して、従たる業務を短期間日本で行う場合に、日本国外の機関が支給する反対給付は、そもそも日本での活動の対価として与えられる反対給付ではないため、「報酬」には該当しません。

例えば、普段はアメリカの企業で働くアメリカ人が、日本企業に販売した製品のアフターサービス、機械の設置、メンテナンスのために「短期滞在」によって来日する場合について、日本での活動の報酬がアメリカの企業から発生したとしても、日本での活動はアメリカで行う業務の一環として行われるものであり、アメリカでの「主たる業務」に付随する「従たる業務」とみなされるため、「報酬」には該当しません。

日本で行う活動自体に対する報酬ではなく、外国で行う業務の付随業務に対する報酬であれば問題ないという解釈です。

「収入を伴う事業を運営する活動」の解釈

「収入を伴う事業」で区切るとわかりやすいです。「収入を伴う事業」とは、一般的な株式会社をイメージすれば一番わかりやすいですが、株式会社でなくても、合同会社、個人事業主、営利・非営利問わず、収入が伴えば該当します。

そしてその「収入を伴う事業」を「運営する活動」が該当するため、事業を運営する個人が収入を得るかどうかは無関係です。

例えば、日本に子会社のある外国親会社の取締役が、日本の子会社の無報酬の代表取締役としても登記されている場合、主に外国の親会社で勤務し、重要な商談や業務連絡時に「短期滞在」で来日していたとしても、臨時的かつ短期間しか日本に滞在していないことから、日本の子会社を「運営する」活動とは言えないこととなります。

「収入を伴う事業」を「実質的に運営」しているかどうかが重要であり、役員として登記されていても、事業の運営とは関係ない目的の「短期滞在」で来日した場合等は、事業を運営する活動には当たりません。

「短期間」の解釈

1回の滞在が短期間であったとしても、複数回にわたり来日を繰り返し、中長期的に見て長期間と言えるような活動は、「短期滞在」では認められません。基準として、1年間の内、「180日」を超えるような活動は、「短期滞在」では認められず、180日を超えない場合でも、短い期間で出入国を繰り返している場合は、入国時に不法就労を疑われ、場合によっては入国できない可能性もあります。

「謝金」等の例外について

入管法上、「業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬」は「報酬」から除かれると規定されています。
具体的には、以下のような場合です。

  1. 「DX化促進セミナー」の講師として中国グループ企業から「短期滞在」で来日した中国人に対し、謝金として5万円渡す場合
  2. 観光目的で「短期滞在」で来日したベトナム人の友人に引越しの手伝いをしたもらった後、お礼として2万円渡す場合

よくある質問

「短期滞在」で在留する外国人への報酬について、よくあるご質問を紹介いたします。

Q海外グループ法人から出張で来日する社員に、出張手当を払ってもよいでしょうか?
A海外で行っている主たる業務に付随して行う従たる業務を短期間行う場合(日本へ輸出販売した機械のアフターサービス、会議への出席、業務連絡など)は、日本で行われる活動の対価ではないので問題ありません。
Qインターンシップ生として来日した海外の学生に日給5,000円を払ってもよいでしょうか?
Aインターンシップという活動の対価としての報酬はNGです。交通費、宿泊費など実費弁償の性格を有する支払いはOKです。
Qセミナー講師で来てくれた外国人に謝金3万円渡しても問題ないでしょうか?
A業として行うもの(事業として行っていない反復継続性のない活動)ではない講演に対する謝金は問題ありません。

短期滞在の更新

「短期滞在」で在留する外国人は、「人道上の真にやむを得ない事情又はこれに相当する特別な事情」を除き、原則在留期間の更新はできず、在留期限満了日までに日本から出国する必要があります。

更新が認められるケース

「人道上の真にやむを得ない事情又はこれに相当する特別な事情」とはどのような事情でしょうか。
具体的な事例を紹介いたします。

  1. 「経営・管理」の在留資格で在留するバングラデシュ人の8歳の娘(以前日本の病院で斜視の手術を受けた際に、担当医師から予後の診察が必要なので、再来日したら必ず来院するよう指示されていた)が「短期滞在」で来日し、病院に問い合わせたところ、医師の予約が取れたのは、「短期滞在」の在留期限後の日になってしまった場合
  2. ロシア人医師が「短期滞在」で来日したところ、体調不良により本来の来日目的である「親族訪問」が未消化となってしまった場合
  3. バングラデシュ人が「短期滞在」で来日後、死亡交通事故による保険金請求の処理が必要となった場合
  4. 「短期滞在」で来日したインド人実母が、出産直後の娘の世話をする場合

まとめ

「短期滞在」は外国人が最も簡易的に取得できる在留資格ですが、その反面日本で行うことができる活動は非常に限定的です。

日本企業においては、海外グループ企業から出張者を受け入れる際、「短期滞在」で日本への入国を繰り返し、実質的に日本での活動が主たる業務となっているようなケースも見受けられますが、これは違法です。
基本的には、外国人が日本で報酬が発生する活動を行う際は、就労系在留資格を取得する方向で検討しましょう。

自社の外国からの出張者の業務内容や出張期間について、改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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