派遣や業務委託による外国人受け入れの注意点

企業が、外国人労働者を自社で雇用するのではなく、他の企業から受け入れる場合や、雇用契約を締結せず業務を委託する場合等、直接雇用でないと、出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」と言う。)の規制を受けない誤解されていることが多いです。

しかし、直接雇用でない場合でも入管法の規制は及ぶことはもちろん、直接雇用の場合よりも慎重な管理が求められます。

派遣や業務委託による外国人を受け入れる際の、注意点を解説いたします。

派遣形態

通常、直接雇用の場合は自社の業務内容を記載した申請書を出入国在留管理局(以下、「入管」と言う。)に提出し、在留資格を取得するため、認められる業務内容の判断は自社が容易に確認できます。

しかし、他の企業(派遣会社等)との雇用契約に基づき、外国人労働者を受け入れる場合、派遣元会社にて申請書の作成、提出を行っているため、認められる業務内容は派遣元及び外国人本人しか知る余地がなく、派遣先企業は派遣元もしくは外国人本人に認められる業務内容を共有してもらう必要があります。
派遣形態により外国人を受け入れる場合は、派遣元によるどのような申請内容に基づき許可が得られたものであるかについて、確認するようにしましょう。

派遣元がこのような確認を怠り、認められない業務をさせた場合は、外国人本人は資格外活動罪、派遣先は不法就労助長罪や資格外活動幇助罪が成立します。

業務委託形態

業務委託先企業に所属する外国人労働者を受け入れる場合

他社と業務委託契約を締結し、当該業務委託先が雇用する外国人を自社に受け入れ、自社の業務に従事させる場合についても、認められる業務内容の範囲を超えた業務をさせてしまうと、不法就労助長罪が成立します。

もっとも、業務委託契約については、受け入れ企業の指揮命令の下業務に従事していたか、対人関係上優位な立場にあったか等が考慮されます。

外国人本人と業務委託契約を締結する場合

企業がフリーランスの外国人に業務委託契約によって業務を委託する場合についても、入管法上の規制は及びます。したがって、認められる業務内容の確認は必要不可欠であり、認められる業務の範囲外の業務を委託した場合は、不法就労助長罪が成立します。

また、「留学」や「家族滞在」等の在留資格を持つ外国人に対し業務委託契約を締結する場合、その業務にかかる時間に注意が必要です。

「留学」や「家族滞在」の資格外活動許可は、週当たりの労働時間が28時間以内までと定められています。業務委託契約によって委託する業務の処理にかかる標準的な時間が明らかとなっている場合、週28時間を超える業務を委託すると、資格外活動幇助罪が成立し得ます。

資格外活動許可によって業務に従事する外国人に業務を委託する場合は、業務にかかる時間を客観的かつ正確に把握すること、及び契約書に労働時間を明記した上で契約を締結しましょう。

またフリーランスの場合、複数の企業からの業務委託を請け負っている可能性があります。A社からの受託業務で週20時間稼働し、B社からの受託業務で週10時間稼働した場合、請け負った外国人に対して資格外活動罪が成立するとともに、当該外国人の業務受託状況や業務処理に要する時間等に係るA社とB社の認識いかんによっては、A社、B社について資格外活動幇助罪が成立します。

トラブル事例

実際に外国人派遣社員を受け入れた企業の、トラブル事例をご紹介いたします。

派遣先にて資格外の活動をさせていた事例

在留資格「拡大解釈」許さず 外国人就労、派遣先も責任

人材会社から派遣された外国人に在留資格の範囲を超える業務をさせたとして、警視庁がカレーや和洋菓子の老舗として知られる中村屋を入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検した。外国人を直接雇用する企業の摘発例はあったが、派遣先の刑事責任を追及するのは珍しい。

熟練労働者を中心に海外人材を受け入れる仕組みが整いつつあるなか、在留資格を安易に〝拡大解釈〟する企業側の姿勢に捜査・入管当局が厳しい目を向けている。
警視庁が法人としての中村屋と採用担当社員を書類送検したのは2021年12月。
捜査関係者によると、人材会社から派遣されたネパール国籍の6人について、与えられた在留資格がエンジニアや通訳などを対象にする「技術・人文知識・国際業務」であると知りながら、18年11月~21年6月、工場で資格外活動に当たる和菓子の製造などをさせた疑いが持たれている。
※2022年2月2日付 日本経済新聞電子版

問題点

①派遣先が資格外の活動をさせている
→食品工場での和菓子の製造は「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動の範囲外
 不法就労助長罪に当たる

②派遣元の人材会社が資格外の活動であることを知りながら派遣している
→食品工場で働くと知りながら、派遣している
 不法就労助長罪に当たる

派遣元は、派遣先での業務内容が資格外であるとわかりながら派遣していたので、不法就労助長罪が成立することについて異論はありませんが、派遣先は資格外であると認識していなかった可能性があります。

派遣で外国人を受け入れる際、業務内容について、「問題ないから派遣しているのだろう」とか、「派遣元が問題ないと言っているのだから」等と思い込んでしまう会社も多いのではないでしょうか。

資格外の活動が発覚した時、派遣先企業が罪に問われないとするには、「確認に当たって尽くすべき手段を全て尽くす」ことまで求められるため、派遣元への確認はもちろん、場合によっては入管に問い合わせることも必要でしょう。

まとめ

いざ法令違反となってしまうと、300万円以下の罰金または3年以下の懲役等の重い罰則が課せられることもあります。

企業にとって一番のダメージは、罰則よりもニュースとなってしまうことによる顧客からの信頼度の減少でしょう。

法令順守を徹底すべく、今一度自社の外国人社員や業務委託契約について見直してみてはいかがでしょうか。

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