外国人を雇用する企業が気を付けるべきポイントまとめ【入管法違反】

外国人を雇用する場合、出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」と言う。)に違反していないかを管理する必要があります。初めて外国人を採用する企業や、外国人を既に雇用している企業でも、入管法に関してはなかなか気が回らない部分かと思いますので、この機会に是非覚えておきましょう。

近年の入管法制の傾向

近年、外国人労働者の受け入れ拡大が進むにつれ、外国人の不法就労や外国人と企業の労使問題等が浮き彫りになり、外国人の労働問題についてニュース等でも目にする機会が多くなりました。

特に2017年の技能実習法の改正を皮切りに、それまで一部の日本企業が持っていた外国人労働者に対する意識の低さや、入管法制度の甘さとそれに伴う出入国在留管理局(以下、「入管」と言う。)の対応等から脱却する意味で、入管法や技能実習法の違反者に対する制裁の強化が進められています。

例えば、不法就労活動を助長した者に対する不法就労助長罪は、不法滞在者を雇用している企業等に課せられる罰則ですが、「過失のないとき」を除くとしています。行政見解はこの「過失のないとき」を極めて狭く解釈しており、「過失」とは、確認に当たって尽くすべき手段を全て尽くさなかったことを意味すると広く捉えられています。違反が発覚した時、「知らなかった」では済まされないということです。

外国人と雇用契約や業務委託契約を結ぶ時や、派遣によって受け入れる場合等は、徹底したコンプライアンス体制の構築が必要不可欠です。

刑事罰

不法就労助長罪【入管法73条の2】

事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた場合は、不法就労助長罪が成立します。
在留資格該当性のない就労活動は全て不法就労活動となります。

【具体例】
・翻訳・通訳業務で在留資格を取得し雇用した外国人を、アパレル店舗での日本人に対する接客業務に従事させる
・在留期間を徒過した外国人を雇用し続ける

在留資格を取得した際に入管に申請した業務内容以外の活動をさせる際は、在留資格で認められる範囲内の業務ではない可能性があるため、注意が必要です。

よくある事例は、派遣社員として受け入れた外国人にさせていた業務内容が、入管法上認められる業務ではなかったとして不法就労助長罪に当てはまるケースです。派遣社員は派遣元で在留資格の申請をしているため、派遣元と派遣先間のコミュニケーション不足により、外国人にさせて良い業務の共有が行われない場合があるためです。

不法就労助長罪に違反すると、雇用している企業の代表者が書類送検、逮捕となる可能性があるのはもちろんのこと、近年では外国人に積極的に不法就労活動を働きかけていた直接の上司や同僚の従業員等も、立件されているケースが増加しています。

資格外活動幇助罪【入管法70条1項4、刑法62条1項】

外国人との間で、対人関係上の優位性(上司等)や働きかけがなくても、不法就労活動を物理的又は心理的に容易にしたと言える場合には、資格外活動幇助罪が成立します。

【具体例】
・外国人が自発的に行っている業務が、入管法上認められない業務内容であるにもかかわらず、雇用主が注意や管理をしなかった場合

在留資格等不正取得罪【入管法70条1項2の2】

偽りその他不正の手段により、在留資格等を取得した場合に成立します。

本来であれば、入管法上認められない業務内容であるにもかかわらず、虚偽の業務内容を記載して申請、在留資格を取得した場合、その虚偽申請に関与した企業が罰せられます。積極的に虚偽の内容を記載した場合はもちろんですが、不利益な事実を隠して申請した場合(不作為)も対象となります。

【具体例】
・飲食店での接客業務スタッフとして雇用した外国人の在留資格取得申請の際、業務内容を本社での営業企画として記載するよう指示した場合
・直前期の決算文書が赤字だったため、まだ直前期の決算文書を提出できないとして、前々年度の決算文書を提出した場合

改善命令違反罪【入管法71条の3、76条の2】

入管庁長官による改善命令(入管法19条の21)に違反した特定技能所属機関又はその職員について成立します。

「特定技能」は2019年に創設された新しい在留資格のため、その取り締まりは厳しくなっています。特定技能外国人を受け入れる企業に対しては、入管への定期的な届出や報告義務が課せられており、不備があれば改善命令が下されます。その改善命令に従わない場合は罰則の対象となります。

【具体例】
・特定技能外国人支援計画に沿った業務ではないとして、改善を命令したにもかかわらず改善しなかった場合

届出規定違反罪【入管法71条の3、76条の2】

入管法19条の18第1項1号の届出(特定技能雇用契約に係る届出)又は同条2項1号の届出(受入れ状況に係る届出)をせず、又は虚偽の届出をした特定技能所属機関又はその職員について成立します。

報告徴収等違反罪【入管法71条の4、76条の2】

入管法19条の20第1項の規定による報告、帳簿書類の提出又は提示をせず、もしくは虚偽の報告、帳簿書類の提出又は提示をし、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、もしくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した特定技能所属機関又はその職員について成立します。

技能実習法違反罪【技能実習法111条等】

技能実習生を雇用する企業の職員について、旅券等保管罪(技能実習法111条5、48条1項)、通信等禁止告知罪(同法111条6、、48条2項)、申告不利益取扱罪(同法111条7、49条2項)、改善命令違反罪(同法111条1、15条1項)、帳簿規定違反罪(同法112条5、20条)等が技能実習法に規定されています。特に、帳簿の作成を怠り、もしくは事業所に備えて置かず、又は虚偽の帳簿を作成した場合に成立する、帳簿規定違反罪に留意が必要です。

外国人雇用状況届出規定違反罪【労働施策総合推進法28条1項】

全ての事業者は、外国人の雇用と離職の際に、ハローワークに届出する義務があります。この届出を怠った事業者は、罰則の対象となります。

職業安定法違反罪【職業安定法30条2項等】

職業紹介事業者が、国外からの人材を日本の事業者に紹介する際、国外の取次機関等(人材会社)を利用する際は、提携する取次機関を申告し、相手先国に関する書類及び取次機関に関する書類を提出しなければなりません。

雇用主に関する罰則ではなく、外国人材を紹介する企業に関する罰則です。外国の人材会社等を通して外国人材紹介を行う場合は注意しましょう。

まとめ

ご紹介した入管法等の罰則の他、通常の日本人と同じように労働法等の遵守ももちろん必要です。外国人特有の罰則があることを認識し、適正な労務管理を行いましょう。

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