単純労働って何?~技術・人文知識・国際業務で認められる業務の範囲~

日本で働く外国人の多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を持っていますが、認められる業務は「専門的な業務」とされ、単純労働はNGです。とはいっても組織で働く以上単純労働が発生することもあります。ではどの程度であれば認められるのでしょうか。

単純労働とは

例えば、建設現場の作業員をイメージしてみましょう。主な仕事は鉄筋や木材の設置、組立、左官、塗装等があります。これらはいくら我々のような行政書士が机の上で勉強してやり方を学んだとしても、実際に業務にあたってみないとスキルは身に付きません。実際にやることで技術やコツを学んで身に付くものです。

同じ建設現場でも、施工管理者をイメージしてみましょう。施工管理の仕事は資材の手配、工程の管理、図面通りになっているかの確認等があります。資材の特性を知っていなければ建物ごとの適正な資材の手配や工程の管理はできません。設計図の見方を知らなければ図面通りになっているかの確認もできません。もちろん現場での経験も必要ですが、ある程度の専門的な知識の習得が必要不可欠です。

実際に現場で作業することで技術が身につく建設現場の作業員は単純労働、ある程度の専門知識が求められる施工管理者は、「技術・人文知識・国際業務」で認められる業務となります。

単純労働が認められるケース

①日本滞在の目的が就労ではないケース

コンビニの店員、飲食店のホールスタッフ等、日常生活を送る中でも外国人が働いている場面は多く見られ、単純労働をしている場合も多いです。このような外国人は就労目的の日本滞在ではない場合がほとんどでしょう。

例えば留学生は「留学」という在留資格を持っています。これはもちろん就労が目的ではなく日本の教育機関で勉強することが目的ですが、「留学」の在留資格外の活動を行うことができます。それが「資格外活動許可」です。資格外活動許可を取得すれば、週28時間以内であればアルバイトをすることができます。

留学生に限らず、日本で働く配偶者と一緒に暮らす目的の「家族滞在」の在留資格を持つ方や、日本人と結婚した方等も資格外活動許可を取得してアルバイトを行うことが可能です。

②期間限定で単純労働を行っているケース

大企業が新卒社員を採用し、会社の商品や理念、業務全般を理解させるために入社当初の一定期間に限り単純労働をさせる場合があります。
将来のキャリア形成のために研修期間として現場の業務を体験させる必要があること、研修期間は入社当初の一定期間に限られること、研修期間経過後は専門的な知識を要する業務を行うこと等が説明できれば問題ありません。
一定期間とはどのくらいかということについての明確な基準はありませんが、長くても1~2年程度でしょう。

③単純労働が主な業務ではないケース

単純労働がNGとされるのは主な業務が単純労働の場合です。
例えば、普段は専門的な知識を生かして営業企画業務にあたっている外国人が、業務の一環としてエクセルに数字を打ち込む作業があったり、お客様との打ち合わせ時にお茶汲みを行ったり、週一回朝礼後にオフィスの清掃を行ったり、主な業務に付随する業務として単純労働が発生するのは問題ありません。

認められる業務の限界事例

①ホテルでの業務

ホテルスタッフとしての業務としては、フロントでの受付業務、ベル業務、客室清掃業務、レストランでの配膳業務等がありますが、これらはすべて単純労働としてみなされやすく、不許可となる可能性が高いです。ホテルで外国人が働くためには、外国人宿泊者に対する外国語を用いた接客業務、翻訳・通訳業務、もしくは現場スタッフではないですが外国人観光客誘致のための広報、宣伝、営業戦略立案担当等とする必要があります。

実務上は外国人宿泊者に対する接客業務や翻訳通訳業務が主たる業務といえるほど外国人宿泊者がいるのかがポイントとなり、宿帳等で外国人宿泊者の人数を立証します。

いずれにせよ、ホテルでの就労は実務上許可と不許可の限界事例ですので、申請の際は慎重に検討する必要があります。

②アパレル店舗での業務

服飾系の学校を卒業した外国人がアパレルの会社に就職する際、洋服のデザインや企画、広報宣伝、営業戦略担当となる場合はおおむね問題ありませんが、アパレル会社に就職すると多くの新入社員はまず店舗での接客業務から始めるでしょう。会社として、店舗での配属は一定期間とし、一定期間経過後は本部での業務を予定していることが明確であればよいのですが、現場での販売実績、本人の適正等を考慮して配属を決めるという場合、店舗での接客業務がどのくらいの期間となるかがわかりません。その場合は不許可となる可能性が高いです。

実務上、入社後の最初の業務を店舗での接客業務とする場合は、入社後5年程度のキャリアプランを作成し、一定期間経過後は本部での業務を予定していることを説明する必要があります。

まとめ

業務内容は、実務上最も慎重に検討すべき点です。不許可となると再申請のハードルは格段に上がりますので、申請時点で客観的、合理的に説明できるよう整理すべきです。少しでも単純労働と疑われそうな業務の場合は、専門家に相談することをお勧めいたします。

単純労働って何?~技術・人文知識・国際業務で認められる業務の範囲~” に対して2件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です